本当の「ぶぶ漬け」

2012.01.07

出掛ける用事を思い出したのは方便であることは、言われた側も承知の上での話。阿吽の呼吸である。「ぶぶ漬け」はともかくも、話をしていて、出掛ける用事を思い出されたら、それはもう立派な催促。一刻も早く帰るべし、である。では本当の「ぶぶ漬け」は、というと。京都の古い町家にはきまって玄関先の土間に二畳ほどの小間があって、不意の来客はたいていがこの小間に腰掛けて話し込む。思いのほか話が盛り上がり、ちょうど時分どきになった。

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「どうどす?お茶漬けでも。なんにもご馳走はおへんけどなあ」。「いやあ、こんな時間になってましたんやなあ。おいとましますわ」。「まあ、そない言わはらんでもよろしいがな。お急ぎやおへんにやろ?」「どうしよ?お邪魔やおへんの?ほんまに?ほな、よばれていこかしら」とまあ、こんな遣り取りの後、居間に上がりこんで、二人でお茶漬けを啜ることになる。多くの京都人は家で漬物を漬けている。かつては信楽の壷、今ならプラスチックの容器に糠床を作り、毎日かき混ぜては野菜を漬け込む。余ったビールを入れたり、錆びた釘を混ぜたり、それぞれが自分なりの流儀を持ち、それを披露するのも、この「お茶漬けの時間」である。