出発までホームは大賑わいだ。機関車の前では乗客や見物客の記念撮影が盛んに行われている。駅員や乗務員も好意的で帽子を被らせてくれたり、シャッターを押したりとサービスに余念がない。そうこうするうちに発車時刻となり、一〇時三七分、汽笛一声、列車はゆっくりとホームを離れた。まずは最後尾にある展望車の窓のない展望デッキから身を乗り出して、力行する機関車を眺める。駅を出てすぐに左へ大きくカーブしていくので、煙を吐き蒸気を出すC57の雄姿が堪能できるのだ。ほぼ直線コースとなって平坦地を快走するようになると、指定席のとってあった前から四両目の「欧風客車」の席に向かう。欧風客車とは「オリエント急行」をイメージした客車とのことで、背もたれが天井に届かんばかりに高く、向かいあわせの四人掛け席がコンパートメント風になっている。窓も普通の客車よりかなり小さいが、その分閉ざされて落ち着いた雰囲気がする。「SLやまぐち号」の編成の中では一番人気のようだ。相席となったのは福岡からツアーできたシニア世代の夫婦。よく考えれば九州から山口までは陸続き同然で、新幹線「のぞみ」だと四〇分もかからない。日帰りでもゆっくり旅行できる近さなのだ。大阪からでも二時間弱なので、一〇時三七分発車というのは集客面でもよく考えられた設定である。